第31章 ステップアップへのチャンス
繋「とっとと食って準備しろ?試合の前のボール回し、紡も入れてやっから」
『繋心ホント?!』
繋「あぁ、だから早く食え」
よく噛んで食わねぇと大きくならねぇぞ?と言う繋心に軽くパンチして黙らせる。
『そういう訳なので、せっかくでしたが···』
ペコリと頭を下げて、そのまま清水先輩の方へと急いだ。
『清水先輩、これ慧太にぃからです!女子限定の差し入れだって』
清「慧太さんから?あ、美味しそう···それより、いろいろお疲れ様。助けに行こうと思ったら、ちょうどコーチが来たから」
見てたなら、繋心が来る前に助けて欲しかったです。
『とにかくゼリー!冷たい内に食べましょう!』
テーブルの隅っこに向かい合って座り、慧太にぃからの差し入れをふたりで食べる。
キラキラとしたソーダ風味のゼリーの中に、ぎっしりと詰まったフルーツは存在感があって···美味しい。
慧太にぃ、なかなかのチョイスだよ!
澤「食べてるトコごめん。紡、ちょっといい?」
『あ、はい。大丈夫です···隣、座ります?』
横に並ぶ椅子を引いて勧めると、じゃあ、と言って澤村先輩が腰を下ろした。
澤「もうコーチから聞いてると思うけど、このあと試合始まる前に軽く流すんだけど、コーチがそこに紡も混ぜてやれって」
『はい!もちろんお手伝いします』
さっきあれだけ目の前でいろいろ凄いの見せられたから、ボール···触りたかったし!
澤「それで、だ。俺としてはちゃんと食事を摂ってない部員を入れて倒れられたら困るから、ちゃんと食べてるか確認しに来たんだよね。で、はい、これ」
え···ウソでしょ?
『だ、大地さん?···これはいったい?』
澤村先輩の手には、逃れられたと思っていた唐揚げとラップを半分剥がされたおにぎり。
澤「まさか、慧太さんからのゼリーだけで済ませようとは···思ってないよね?」
うっ···バレてる。
菅「ってことで、はい紡ちゃん?あ~んして?」
『スガさんまでっ?』
清水先輩助けて!と目で訴えるも、クスクスと楽しそうに笑っていて。
清「ほら城戸さん、烏野のお父さんとお母さんが食べなさいって言ってるわよ?」
なぜ、こんなことに。
さすがに澤村先輩達には無理にお断りなんて出来るはずもなく、さっきよりも多くの人が見守る中で私はそれを食べざるを得なかった。