第10章 烏野高校男子バレー部
2人で足を忍ばせ、リビングをそっと通過し、ウッドデッキへと出た。
もし紡が起きて窓を開けても、煙が部屋に入らないようにと、2人で広いウッドデッキの端に寄りかかる。
「そんで?紡の秘密って?」
改めて慧太が問うと、桜太はちょっと考える仕草を見せ、それから慧太に向き合う。
桜「今朝、紡を学校まで送った時なんだけど・・・」
そう切り口を見せ、門の所で菅原と名乗る3年生に会った事、会話の感じから初めからその時間に約束があった訳ではない事などを話す。
桜「それでさ、あくまでも俺の推測なんだけど。菅原君って、バレー部だと思うんだよね、かなりの高確率で」
「なんでそう思う?朝たまたま会って、挨拶しただけだろ?」
桜「会話的にはそれくらいしか彼と言葉を交わしてないんだけどね。でも、菅原君の鞄に付いてたファスナーマスコット、形は小さかったけど、モルテンボール、だったと思う」
「なるほどねぇ」
笑いながら組んでいた腕を解き、慧太は煙草に火をつけた。
フゥっと煙を吐き出し、桜太にも煙草の箱を向ける。
桜太はその中から1本取り出しては、口元に運び、そのまま慧太の火種を移し煙草に火をつけた。
ほの暗い中、ふたつの煙が細く揺れている。
「でもよ、それだけじゃ紡が何をしようとしてんだか、まだ分かんねーけど?」
慧太が言うと、決定的っぽいのは・・・と桜太が切り出す。
桜「さっき、紡が寝てるのを声かけたり、肩を揺らしたりした時、見えなかった?」
なにが?と、慧太が返す。
桜「紡の両手にさ、手首の上あたり、うっすらと痣っぽいのあったでしょ?」
「そんなのあったか?ってか桜太の観察眼スゲェな」
桜「職業病?かな?ま、それよりもさ。あの紡の作ってきた痣、どうしたら出来るか、考えてみなよ?」
桜太の謎かけに、慧太は咥え煙草で考える。
両手首付近に、アザ、ねぇ・・・
自分の両腕を伸ばし、合わせてみる。
自然とよく見慣れた形に腕が合わさった。
「!、レシーブか?!」
まるで大発見をしたかのように慧太が言うと、
桜太「ピンポ~ン、正解です」
そう言って桜太は笑った。
桜「紡が話したくないなら、仕方ないけど、後でちょこっと紡をつついてみようかとは思ってるよ?」
「うわ、出た、桜太の誘導尋問・・・」