第10章 烏野高校男子バレー部
~城戸家のリビング~
バタン・・・
慧太がシャワーを浴びていると、玄関が閉まる音がした。
桜太が買い物に出てるから、帰ってきたのか?
そう思ったところに、
『ただいま~』
と紡の声がする。
帰ってきたのはそっちか、とシャワーを止め、簡単にバスタオルで拭きあげながら、慧太はリビングへと足を運ぶ。
「紡、おかえり」
慧太が声をかけながらリビングへと続くドアを開けると、そこには既にソファーで寝入ってしまっている紡の姿があった。
「おいおい、今帰ったばっかで寝るの早すぎんだろ」
そう呟きながら、紡の肩を揺する。
「こんな所で寝てたら風邪ひくぞ」
『・・・・・・・・・』
「全くもって起きる気配ねーな」
どう声をかけても、どう揺すっても起きない紡を、いっそ抱えて部屋まで運んでやるか?と考えたが、それが元で無理に起こすのも悪いか、と慧太は考えた。
「ったく、しょうがねぇな」
そう呟いて、慧太は一旦自室に戻り、服を着て、毛布を持ちリビングへ戻った。
ドアを開けると、さっきの自分と同じ様に紡に声をかけ、肩を揺らす桜太がいた。
「なんだ?帰ってたのか?おかえり」
桜「ただいま。たった今、帰ったとこなんだけど・・・」
食材がたくさん入った袋を掲げて見せ、そう言いながらも桜太は紡に声をかける。
「ムダムダ。オレもさっき同じようにしたけど、全く起きねぇよ。だからホラっ」
部屋から持ってきた毛布を掲げ、桜太に見せた。
2人でそっと毛布をかけてやると、桜太は紡の手提げから弁当箱などの洗い物を取り出し、慧太はその鞄やら手荷物をソファーの脇に片付けた。
その際に、紡の手荷物の中から、バレーシューズが顔を出しているのを見つけた。
「桜太、これって」
呼びかけられた桜太も、そのシューズを確認してフッと笑う。
桜『紡が、俺達にまだ打ち明けられない理由の、最初の1つだよ』
エプロンをかけながら桜太が言った。
「は?コイツ、またバレーやり出したのか?」
目を丸くしながら慧太が声をあげた。
桜「シィーっ、慧太、声が大きいよ。紡が起きちゃう」
悪ぃと片手を上げ、慧太は桜太がいるキッチンへと足を運んだ。
「で?何の理由だって?」
換気扇の下で煙草に火をつけようとする慧太に、桜太は手でそれを制し、灰皿を持って外に行こうかと誘う。