第31章 ステップアップへのチャンス
どれくらい食べるかなんて分からないけど、何も食べずにいるよりはいいから。
『研磨さん、とりあえずの物を持って来たのでどうぞ?』
邪魔にならない程度にお皿を差し出して見せる。
研「あとで···いま、手が離せないから」
『あとでって、時間は待ってくれませんよ?』
研「じゃあ···食べさせて」
ん···?
はい···??
って···?!
『えぇっ?!わ、私が?!』
研「そう。時間···ないんでしょ?」
それはそうだけど!
えぇっ~?!?!?!
で、でも食べる意思はあるなら···いやでも···だけど!
こ、こここ、ここは敵に塩を送る感じで!!
動揺と困惑が頭を駆け巡るも、食べてくれるなら···それなら!とおにぎりのラップを剥がして差し出す。
『研磨さん、ど、どうぞ』
研「ん···ありがと」
初対面の人に、まさかその日の内にこんな風に食べさせてあげる事になるとは思ってなかったよ。
それにしても、恥ずかし過ぎて死にそう···私。
どうしたらいいのか分からずに澤村先輩やクロさんを見ると、視線に気付いた澤村先輩はなにか言いたそうな顔はするものの苦笑を見せるばかりで。
クロさんに至っては澤村先輩と何か話しながらニヤリと笑って助けには来てくれなかった。
そんな中、研磨さんは妙にマイペースというかなんと言うか。
もしかして音駒では、よくある事なのかと認識してしまう。
じゃあ、普段はこれを芝山君が?!
···それも、なんだかなぁ。
研「···クリア」
続けていたゲームがようやく納得出来る所に到達したのか、そんなひと言を呟いてやっと研磨さんがスマホから手を離す。
『研磨さん、キリがいい所でそれは終わりにしませんか?ちょうど食べ終わったみたいだし、あとは時間が来るまで休憩して下さい』
そう伝えて丸めたラップなどを紙皿に乗せ、身の回りを片付ける。
研「ありがとう···紡」
スマホの画面をシャツの裾で拭きながら言う研磨さんに、どういたしましてと返して立ち上がろうとすると···クイッとジャージを引っ張られる。
『研磨さん?まだなにか?』
研「紡は···食べたの?」
『いえ、まだこれからですけど』
みんなが来てから桜太にぃ達の所に居たし。
研「じゃあ···おれが食べさせてあげる。お礼に」
お礼にって、ええっ?!