第31章 ステップアップへのチャンス
軽食を用意した部屋に着くと、中からはわぁわぁと騒ぐ西谷先輩と田中先輩の声が聞こえて来た。
なんの騒ぎだろう···だいたい予想は着くけど。
乾いた笑いを漏らしながら中へ入れば、やはりそこは想像通り清水先輩が二人に詰め寄られていて。
『もう!いい加減にして下さい!!清水先輩は仏様じゃないんだから、こんなにたくさんお供え物の様に食べ物並べない!!』
田「仏さんっ?!」
西「そうだぞ紡!潔子さんは仏じゃなくて女神だ!」
『そこじゃない!!!』
田・西「「 ···サーセン 」」
まったく···と零しながら清水先輩の前に並べられた物を2人に返して、時間ないんだから早く食べちゃって下さいと追い返す。
『すみません清水先輩、長々と不在にしてしまって』
清「大丈夫。いつもなら交わすんだけど、食べ物並べられちゃって困惑しちゃっただけだから」
しょうがない2人よね?と清水先輩が笑ってくれる。
『本当です!ちょっと目を離すとスグ暴走するんだから···』
そう言いながら部屋を見渡せば、隅っこの方に座ってスマホを忙しなく操作する研磨さんが目に入る。
あれ?もう食べ終わったのかな?
そう思って近寄り、覗いてみると···ゲームしてる?!
『研磨さん、食事は終わったんですか?』
研「ん···まだ···」
いや、まだって···
『先に食べちゃわないと軽食の時間が終わっちゃいますよ?』
そう声を掛けても、研磨さんは真剣な顔して画面から目を外す事はなさそうだった。
黒「こら研磨!それは後でも出来るだろ、先に食っとけ?」
研「う、ん···」
私達のやり取りを見ていたクロさんが助け舟を出してくれるも、研磨さんはうわの空な返事を返すばかりだった。
『クロさん、研磨さんはいつもこんな感じですか?』
黒「まぁ、そんな感じっちゃそうだけど」
それなら大丈夫なのかな?とも思うけど、でも、結局食べる時間がなかった···とかになったら、それはそれでイヤだしなぁ。
『クロさん。とりあえず私、研磨さんがすぐ食べられそうな物を取り分けて来ます。先に用意しておけば、いざとなったらモグモグして貰いますから』
私がそう言うとクロさんは笑いながら、んじゃ研磨はよろしく頼むわ~と手をヒラヒラとさせた。
主将なのにそれでいいのか?とも思いながらも小皿に取り分けを始めた。