第31章 ステップアップへのチャンス
芝山君と紙コップや紙皿を用意し終わった所へ、武田先生がみんなを連れて入って来る。
珍しく難しい顔をしてる繋心を見れば、さっきの試合も黒星だったんだろうと予想がついた。
『先生、皆さんがそれぞれ自由に過ごせる様に芝山君と並び替えたので、そう説明して頂いていいですか?』
武「2人でここまで準備して貰って、なんだかすみません。僕もお手伝い出来たら良かったんですが···」
『先生は顧問なんですから、ベンチにいてくれないと』
私が言うと先生は、そうでした···と頭を掻いた。
『それから、私ちょっと席を外したいんですけど大丈夫ですか?』
武「あぁ!お兄さん達のところに行きたいんですね?大丈夫ですよ、ここは僕もいるし澤村君達もいますから。お兄さん達は、今ならまだ猫又先生とお話してると思いますよ」
それを聞いて、先生に行ってきます!と言って駆け出す。
桜太にぃ達が、どの辺りから練習試合を見ていたのかは分からないけど。
···ちょっと聞いてみたい事があるから。
『いた···桜太にぃ!』
姿を見つけて駆け寄れば、慧太にぃがわざとらしく前に立ち塞がる。
慧「お前なぁ、オレだっているのに呼ぶのは桜太だけかっての!」
『あ~も~!慧太にぃ邪魔!』
避けて通ろうと右に動けば、慧太にぃも右に。
左に行こうとすれば、慧太にぃも左に動き通せんぼされる。
『もう!桜太にぃに用があるんだから通してよ!』
慧「ったく、お前はいつも桜太ばっかり···うるせーっつーの!」
桜「うるさいのはお前もだよ、慧太」
猫「元気な妹さんでいいじゃないか」
桜「すみません、騒がしくて···」
慧太にぃのせいで私だけ騒がしいって思われた?!
桜「それで、紡はそんなに急いで俺に何の用事だったのかな?」
『それなんだけど。あ、その前に···監督先生、軽食のご用意が出来てますので、どうぞ召し上がって下さい。温かいお茶等もありますから』
早く行かないとなくなっちゃいます!と笑うと、監督先生もそれは大変だと笑ってくれた。
猫「それじゃ、城戸君。また何かの機会に、な?烏養のジジイにも宜しく伝えてくれ」
桜「はい」
大人同士?の挨拶が終わり、監督先生がいなくなってから本来の目的を果たそうと桜太にぃを見上げる。
『あのね桜太にぃ、さっきの練習試合···どこから見てた?』