第30章 ネコとカラスの対決と···
ー ピッ! ー
私の目の前で繰り返される日向君への、音駒からのチェック。
初めのうちは、全然日向君の速さに追いつかなかったんだけど、でも、さっき。
···指先が触れたのを間近で見た。
何度も繰り返してるうちに、速さに慣れた?
それとも、対策が整えられた?
ここから見てるだけじゃ、掴みきれないものがあって、イマイチよく分からない。
繋「音駒の主将も、始まる前に声掛けてただろ」
繋心と武田先生が話す声が聞こえて来る。
黒 ー オレ達は血液だ。滞りなく流れろ。酸素を回せ···脳が、正常に働く為に ー
試合が始まる前にクロさんが言ってた言葉。
最初はただ、なんか凄い言葉回しだなぁとか思ってたけど。
今の繋心の話で、それぞれを置き換えて考えて見れば妙に納得出来るかも知れない。
オレ達は血液だ。
そう言っていたように、血液っていうのは恐らくコート内にいるメンバー達の事で。
酸素を回せ···の酸素は、ボールの事。
そして、脳っていうのはつまり···セッター。
要するに、セッターとしての本領がきちんと成せるために、自分達が動いてボールを確実に繋ぐ···って事。
そう置き換えて考えると、音駒のレシーブ力の秘訣みたいなのが見えて来る気がする。
音駒の強さは、繋心や桜太にぃ達も言ってたように絶対に落とさない、絶対に繋ぐっていう···レシーブ力なんだ。
だから桜太にぃはあの時、情報が分からない私達に。
桜 ー 相手コートの中の全員が、澤村君や西谷君だと思えば分かりやすいかな? ー
···って、言ったんだ。
あの時は漠然と、それは大変な相手だなぁ···とか、そんな位に思ってたけど。
いざ音駒そのものを目の当たりにすると、その厳しさがよく分かる。
スパイクを打っても打っても、レシーブされる。
あのリベロの夜久さんだって、初見の東峰先輩のスパイクを手に当てていた。
···そういう、事なんだ。
武「あ、また!」
犬「ワンタッチ!」
もう何度目かの日向君のスパイクが、次第に阻まれてくる。
この背の高い人、ずっと日向君をチェックし続けてる。
今もブロックで触って、流れたボールを夜久さんが拾った。
烏野は、きっとここから···苦しい戦いになるのかも知れない。