第30章 ネコとカラスの対決と···
~ 烏養繋心side ~
あの音駒のブロッカー、対日向仕様なのか?
それに、日向とアイツの身長差からしてあまり分がいいとは言えねぇ。
どうすっかなぁ。
こういう時ウチのジジイなら···あ~、ダメだダメだ。
今はオレが烏野のコーチなんだ。
うっかりジジイの指導を使っちまったら、あの音駒のたぬきジジイの思うツボ、だ。
武「目立たない、ですね···」
「あ?」
目の前で繰り広げられる攻防戦から目を離す事なく、先生が呟いた。
武「あ、いえ。うちの影山君は僕みたいな素人が見ても、なんかこう···凄い感じがビシビシと伝わって来るけど、音駒のセッター君は、何か凄い事をやってるのかも知れないけど、見ててもよく分からない···」
なるほどな。
ま、確かに影山はそういう感じに見えるんだろうな。
で、音駒のセッターがそういう風に見えるのは···
「それが、あの安定したレシーブのせいだ。多彩な攻撃を仕掛ける為に、何より重要なのは···セッターの頭上にキレイに返って来る、あのレシーブだ」
武「レシーブ、ですか?」
「あのレシーブがあるから、あのセッターは本領を発揮出来てる。セッターの影山が、圧倒的才能でデコボコのチームを繋ぐのが烏野なら、セッターである孤爪を全員のレシーブ力で支えるのが、音駒だ」
武「チームを引っ張っていくか、チームが支えるか。方向性としては同じ前を見ているようで、少し違う感じですね···」
「そうだな。影山は天才的な力を持ってるが、チームが勝ち進む為には天才がひとりいるだけじゃダメだ」
東峰も西谷も、それぞれスパイカーやリベロとしての才能は持ってる。
それに他の奴らも。
だけど、今はまだ全員が発展途上でバラバラだ。
それを何とか繋ぎとめて引っ張って行ってるのが影山。
もしここで菅原を使ったら、何か新しい事が起きるのか?
いや、それも分からねぇ。
武「チーム力として、まだ烏野は音駒に届いていないという事でしょうか」
「それもあるだろうな。試合が始まる前に音駒の主将も声掛けてただろ」
武「あぁ、なんだか不思議な言葉をでしたね。血液が、どうとか」
「パッと聞いたオレ達が意味が分からなくても、アイツらには主将の言いたい事がちゃんと伝わって、それがレシーブ力にもなってるんだろう」
この試合、主将対決にもなってるって事だな。