第30章 ネコとカラスの対決と···
~ 研磨side ~
さっきからずっと、烏野のブロッカーが張り付いてる。
多分、こいつは賢いやつかも。
黒「山本!」
山「よっしゃー!!」
犬「ナイスレシーブ!!」
烏野からのサーブを受け、ボールがおれの所に向かってくる。
···誰に?
でも、このブロッカーならすぐ止めちゃいそうだから···
チラリと視線でライトを見て、揺さぶる。
おれをずっと見てた烏野のブロッカーがライトを見た視線に反応してピクリと動き出す。
やっぱりこいつ、賢いやつだ···でも。
···レフトだよ。
スっと上げたトスがスパイカーの手に渡り、音駒に点が入る。
こんな風に、普通にバレーが出来るようになるのとか、前まではあんまり思ってなかった。
昔から、自分から友達とか作れた試しがない。
他人は苦手で関わりたくないくせに、他人の目は凄く気になる。
だから、目立たない為に···神経を尖らせた。
遊び相手は、年も家も近い···クロだけ。
スポーツは特に好きじゃないけど、バレーボールは昔から触ってた。
中学はクロに言われて、何となくバレー部に入った。
···ちょっと、楽しかった。
そして、高校でも何となく続けた。
少し前まで、強かった高校だった。
人が···たくさんいて、ここは苦手だと思った。
ー 1年片付け遅ェよ!帰れねぇだろ!! ー
···先輩っていうのは、1年とか2年早く生まれただけで、どうしてあんなに威張るんだろう。
クロは···違うのに。
このまま続けようか、それとも辞めちゃおうかと思ってた時に、クロから呼び出された。
黒「研磨···辞めんなよ?お前は鋭い観察眼を持ってるし、指示だって的確だ。今の1年も2年も、お前の凄さは分かってる···お前は絶対にチームを強くする」
そんなこと言われたって···とか、その時のクロに言い返してたら、今のおれはここにはいない。
クロを、仲間を信じたから···今のおれはここにいる。
バレーを始めたのは、確かにクロに言われたからだったけど。
でも、あの時···続けようって思ったのは。
···おれだから。
みんながおれを信じてくれるように、おれもみんなを信じたから。
だから、おれは今···ここにいる。
スポーツもバレーも、相変わらずそんなに好きではないけど。
でも···ここにいる。