第30章 ネコとカラスの対決と···
『違います!ごく普通の家庭で育ちました!田中先輩もその顔やめて下さい!後で絶対···大地さんに怒って貰いますからね』
田「それだけは勘弁···」
『じゃあ内緒にしてあげる代わりに、はい!田中先輩も長テーブル運んで下さい?ウロウロしてたって事は手が空いてるんですよね?···ね?』
手伝ってくれますよね?の意味を充分に含ませた、2度目の“ね?”を強調して、ニッコリと笑う。
田「田中龍之介、手伝わせて頂きます···」
『よろしい。田中先輩?このテーブルとジャグ、お願いします』
研磨さんが1人で長テーブルを持つのを見て、田中先輩が持てない筈はないと有無を言わせず指示を出す。
夜「まるで猛獣使いみたいだな···」
『なにか?』
夜「ん?アハハ···独り言。オレも手伝うよ」
研「じゃあ、やっくんはコッチの···向こうに。紡、行くよ、案内して?」
私が他チームの、しかも3年生に指示が出せないと気を使ってくれたのか研磨さんが代わりに夜久さんに指示を出してくれる。
あれ?
でも、夜久さんは3年で、研磨さんは2年。
なのに研磨さん、なんの抵抗もなく指示出せるとか?
音駒って、烏野みたいにメンバーがみんな仲良いんだなぁ。
『田中先輩はともかく、お手伝いして下さってありがとうございます』
夜「これくらい、なんてことないよ」
ニカッと笑って夜久さんがテーブルを持ち上げ、さぁ行こうか?と言葉をくれた。
3人とも、何の問題もなくスっと長テーブルを持ち上げ運んでくれる。
こういう時、男の人って凄いなぁ···なんて、いつも思う。
身長の事はもちろんそうだけど、力の違いとか、もうちょっと私もそういうのあったら、誰かに頼らなくてもいいのに···とか。
手も大きくて、何でも掴めそうだし?
そこまで考えて、いつも私の頭を鷲掴みする影山が浮かぶ。
···手は、大きくなくてもいいかも。
何気なく影山を視界の端に捉えながらクスリと笑って、細々した荷物を持ち並んで歩いた。