第30章 ネコとカラスの対決と···
清水先輩と2人で、休憩の為の準備をして行く。
今はメンバー表を書き込んだりするのが優先されて、清水先輩はそっちを澤村先輩と話しながらベンチの方で作業をしてる。
そういう理由で、私がここを1人で準備しなきゃ···なんだけど。
さすがに長テーブルを1人で運び出すのは、女1人じゃ大変なんだよねぇ。
なんせ長テーブルって言うだけあって、長いし。
そして重たい···
『あぁもう!なんで長テーブルって重たいの!』
半ば引き摺る様に持ち上げれば、ヨタヨタとよろめいてしまう。
これは清水先輩の戻って来るのを待ってた方が···いやいや、それじゃ練習試合開始が遅くなっちゃう。
せっかくの練習試合なのに、時間はムダには出来ない。
『仕方ない。諦めて頑張るしか···よい、しょっ···と』
ー 手伝う ー
掛けられた声と同じに力任せで持ち上げていた長テーブルの重さがフワリと和らぎ、手を貸してくれた人を振り返って、驚く。
烏野の誰かかと思っていたのに、まさか···対戦相手の人の手を借りるわけには···
ー どこ、これ ー
『あ、あの!さすがに運んでもらうのは申し訳ないって言うか。なので、私頑張りますから···』
ー いいよ。何か手伝わないと、クロに怒られるから ー
クロ、さんに?
顔を上げて真っ直ぐによくよく見てみれば、あの時クロさんが探していると言ってた人と同じ、金髪のプリン頭に···背丈が私より大きくてクロさんよりちょっと低い···とかいう説明の、人?!
『クロさんが探してた、迷子さん···』
小さく呟けば、その呼び方···イヤだ···と顔を横に向けられてしまう。
『すみません···前にクロさんにあった時に聞いた感じだなって思って···』
ー クロに?···じゃあ、お嬢ちゃんって ー
ポソリと言われ、今度は私が、その呼び方はちょっと···と返した。
ー ふぅん。じゃあ、名前は? ー
『名前···あ、烏野1年の城戸···ですけど』
ー それ名字。聞いてるのは、名前 ー
ごく、一般的に名前を聞かれたら、城戸って答えるのが普通じゃないのかな?とは思うんだけど、下の名前を聞かれるのとか、なんだか不思議な?
『城戸、紡です···けど』
ー 紡、か。じゃあ···紡、これ、どこに運べばいい? ー
『え?あの、名乗るの私だけですか?!』