第30章 ネコとカラスの対決と···
「騙したとか人聞き悪いなぁ、お嬢ちゃんは」
『そのお嬢ちゃんってのもやめてください!』
「だってオレ、名前聞いてないし?」
ニヤリと返してやれば、グッと言葉に詰まっている。
澤「あぁそうか!それはすみません···清水!ちょっとこっち来て!」
清水?
烏野は、2人も女子マネがいるのか?
清「澤村、なに?」
澤「ちょい挨拶と紹介を兼ねて、だ。えっと、澤村です。それから2人はウチのマネージャーをしてくれてる···」
清「3年の清水です」
しなやかにお辞儀をされ、つられてオレも会釈しながら自分の名前を名乗る。
『い、1年の城戸です』
「1年生か、じゃ中学生と間違えても仕方ないっちゃ仕方ないな」
『高校生ですから!』
「知ってる」
ケタケタと笑いながら言えば、そのやり取りをソワソワしながら澤村が見守っていた。
清「澤村、まだやる事あるから」
澤「あぁ、頼むよ」
短い言葉を交わして、清水と呼ばれる女子マネがオレにひとつペコリと頭を下げて立ち去った。
『あ、じゃあ大地さん私も···』
澤「あぁ、分かった。そっちの事、頼りっぱなしで悪い」
『ぜ~んぜん!これくらい、練習試合を控えている大地さん達に比べたらなんて事ないです。じゃ、行ってきます。クロさんもありがとうごさいました』
ちょこんとお辞儀をして、ジャグを抱えて駆けていく。
「大地さん、ねぇ」
澤「え?」
「い~や?マネージャーと名前呼びしてるとか、随分と仲良しなんだな烏野勢は」
どんな関係なんだ?と刺激する様に言ってみれば、さも当たり前のように笑いながらオレを見る。
澤「まぁ、他のヤツらも似たような感じですよ、ウチは」
···ふ~ん、そういう返し?
「ま、いっか。さっきの話、ドリンクとか軽食とか。ウチの連中にも伝えとくから、そん時には宜しく」
澤「はい、是非。俺じゃなくても、ウチのメンバーなら誰でも声掛けて貰って構わないんで」
誰でも、ねぇ。
「あのちびっこいマネでも?」
口端に笑いを含み、わざと煽ってみる。
澤「えぇ、それがご希望とあらば、清水でも、城戸でも?」
「了解。んじゃ、1日宜しくってコトで」
こちらこそ、ともう一度笑顔で返され···やっぱり思う。
···コイツやっぱり、食えないタイプだ、と。
今日は、楽しい1日になりそうだ。