第30章 ネコとカラスの対決と···
話している間に割って入って来た声。
イイねぇ烏野。
女子マネがいるとか、羨ましい限りだな。
澤「紡、慌ててどうした?」
烏野のキャプテンが声に振り返り自分を呼んだ相手を確認しながら目を細める。
『すみません、お取り込み中に。昨日、武田先生とジャグを熱湯消毒しといたのはいいんですけど、フタが開かなくなってしまって』
駆け寄って来る小柄な女子マネに、既視感を覚えたオレは、その姿をマジマジと見てみる。
澤「フタが?先生でも開かなかったのか?」
『いえ、まだ私しか。武田先生は繋心の方に行っているので』
ジャグを抱えながらウチの監督爺さんと話す大人達を目で追いながら、どうしても開かないんです!と上目遣いで、もう一度訴えかける。
この姿、やっぱり!
「お嬢ちゃん、高校生だったのか···」
澤「え?お嬢ちゃん?」
『あ···あの時のクロさん?!』
ようやくオレに気付いたのか、驚いた顔で何度も瞬きを繰り返している。
「随分と発育のイイ小学生か中学生だと思ってたら、まさかの高校生だったとは」
澤「は、発育···?」
オレの視線を感じてか、烏野キャプテンも同じ方向に目を向けた。
『ちょっ、大地さんまでどこ凝視してるんですか!』
澤「えぇっ?!なんで俺だけ?!」
2人のやり取りを聞いて、つい吹き出してしまう。
「まぁ、アレだ。あん時は小学生って言って悪かったな。新しい記憶にお嬢ちゃんは高校生だって書き換えとくわ。ほれ、チョイそれ貸してみろ」
有無も言わさずにジャグを手に取り、開かなくなってしまったと言うフタに手を掛ける。
「よっ···と。はいよ、お嬢ちゃん」
どんだけガッチリなんだと思いながら回したフタはいとも簡単に開き、半分緩めた状態でジャグを返してやる。
『ありがとう、ございま、す?』
「なんで疑問形なんだよ。そこは素直に、開けてくれてありがとうございます、クロさんカッコイイ!素敵!とかだろ?」
『は?』
澤「え?」
プッ···2人して同じような顔しちゃって。
烏野、なかなか面白い。
この2人、なんだかツボにハマりそうだ。
『あ、開けてくれてありがとうございます···ク、クロさん···カッコイ、』
「マジで言うつもりかよ!!」
『だってそう言えって言ったじゃないですか!!···騙したんですねっ?!』