第30章 ネコとカラスの対決と···
~東峰side~
清「東峰、ちょっといい?」
後から先生と来た清水に呼び止められ、その小さな手招きに歩く方向を変えた。
「なに?清水」
清「私ちょっと急ぎで澤村に伝えないといけない事があるの。悪いんだけど、荷物の運搬手伝って貰える?」
「あぁ、いいよ。城戸さんと先生だけじゃ大変そうだからね」
清水の視線の先を追いながら、小柄な2人が車から続々と荷物を下ろしてるのを見て快諾した。
「城戸さん、手伝うよ」
よいしょ、と声に出しながら荷物を下ろす後ろ姿に声をかけ、その荷物に手を添える。
『東峰先輩?!どうしてここに?みんな体育館へと入って行きますよ?!』
「清水から頼まれたんだよ。自分は大地に急ぎの用事があるから荷物運び手伝ってやってくれって」
背負っていたカバンを背中に回しながら、後はどれを下ろせばいい?なんて笑いかける。
『さすがに試合前のエースに、雑用なんて···』
「これくらい平気平気。アップ代わりに働くよ」
『だったらキチンとアップして下さい!東峰先輩は烏野の大事なエースなんですから』
「そんなにプレッシャーかけないでよ?大丈夫だからさ?」
『東峰先輩はプレッシャーかけたくらいがちょうどいいんです』
どうですか!とばかりに胸を張りニコリと笑う城戸さんに思わず苦笑が漏れる。
「城戸さん···なんか西谷みたいだな」
『西谷先輩ですか?』
西「オレがなんですか?」
会話に突如現れる声に、オレも城戸さんも肩を跳ねさせた。
「に、西谷?!なんでここに?!」
西「旭さんがいつまでも来ないから!それに潔子さんに荷物運びの手伝いを任命されました!」
『西谷先輩まで···』
西「で、紡。これみんな運べばいいのか?んじゃ行くぞ!あ、旭さんはそっちの持って!紡はそれだけでいいから」
『え、あ。はい!』
西谷の勢いに押されて、城戸さんは荷物を纏め始める。
さすがの城戸さんも、西谷の押しには勝てないみたいだ。
「行こうか?西谷は早くも行ってしまったし」
まるで米屋の息子か?という感じで荷物を両肩に担ぎ、西谷は歩き出している。
それを追うように、オレ達も残りの荷物を持って西谷のあとに続いた。
『東峰先輩?アップはしっかり!ですよ?』
「分かってるって。厳しいなぁ、城戸さんは」
軽く笑いながら言って、体育館へ入った。
