第29章 ネコと呼ばれる人達
『そうじゃなくて、私に、』
菅「ほら、大地が早くしろって顔してるよ!」
澤「誰がだ!」
短い期間に慣れ親しんだやり取りに笑いを浮かべながら、ゆっくり、大切に紙袋からそれを取り出した。
日「おぉっ!烏野バレー部のジャージ!!」
ただのジャージではなく、みんなと同じで背中の部分には
〖 烏野高校 排球部 〗
と、大きく刺繍もされていた。
澤「遅くなっちゃってゴメン。本当はもっと早く渡してあげたかったんだけど、その···な、サイズとか女の子に直接聞くのも、アレだし、ね」
菅「そうそう、さすがにオレも紡ちゃんの服のサイズまでは知らないしさ!」
月「···知っててもおかしくはないご様子ですケド?」
縁「月島···スガさんはそこまで変態じゃないって」
菅「聞こえてっからな、2人とも!」
そのやり取りにみんなが吹き出し、澤村先輩が静かに!なんて大きく声を上げる。
澤「清水にその辺の事も頼んでたんだ。女子同士なら、別にサイズ聞きあっても変じゃないだろ?」
清水先輩···だからあの時!
言われてみれば、そう言えばと思い当たる事があった。
そんなに寒い日ではないのに、どういう訳か日向君や西谷先輩のジャージを着ておきなさいって持ってきてくれたり、自分のあるからと言っても、どうせあの2人は半袖族だから平気、女の子が1度袖を通したら男子は喜ぶからと手渡されたり。
それを聞いて、過去に縁下先輩からジャージの上着を借りた時のことまで思い出し、そんなものなのかな?なんて何も深く考えずに袖を通した事があった。
このジャージが私の手に辿り着くまでに、そんな裏話があったとは···
感慨深く清水先輩に視線を移せば、いつかのように笑顔で小さくピースサインを向けられ私も釣られて笑ってしまう。
澤「せっかくのサプライズだからさ、ちょっと着てみてよ?」
菅「うん!オレも見たい!何なら手伝うよ?!」
ウキウキと近寄る菅原先輩に、清水先輩が小さくコホンと咳払いを向ける。
清「菅原、いま急にセクハラ大王の手腕を出さなくていいから」
菅「あ、はは···すみません···って!オレの手腕って?!」
旭「スガにそんな異名と能力があったとは知らなかったなぁ」
菅「旭まで!」
狙ったのか、そうでないのか分からない東峰先輩の発言にも、思わず笑いが零れてしまう。
