第29章 ネコと呼ばれる人達
『あの、大地さん?もしかして私、自分が気付かない内に何かやらかしました?』
隣に立っていても、みんなが集まり切るまで何も言わずにいる澤村先輩にそっと聞いてみる。
澤「何もおかしな事はしてないよ。ただ···ま、もうちょっと待ってて?」
こういう時の澤村先輩は、それ以上私が何を聞いても答えてはくれないだろうと先読みして、何が起こるのか不安になりながらも口を閉ざした。
澤「みんな揃ったな?じゃ、ちょっと聞いてくれ」
「「 っス 」」
澤「紡が俺達のマネージャーとして、正式に入部届を出してくれた事は既に知ってるよな?」
菅「そうそう、あれを聞いた時はホントに嬉しかったよな!」
月「人並み以上に浮かれてたのは、菅原さんだけだったと思いますケド?」
菅「でも!みんなだって少なからず嬉しかっただろ? 」
チクリと呟く月島君に、まぁまぁ···と言葉を流しながら菅原先輩が笑う。
澤「そこで、だ。さっきみんなにユニフォームを配ったから、いいタイミングだと思って清水に持って来て貰った物がここにある」
『あの、すみません。私がマネージャーになった事と、その清水先輩が持って来てくれた物と何が関係してるんですか?』
話の繋がりが全然読めず、つい、澤村先輩の言葉に口を挟んでしまう。
澤「とっても関係ある物だよ。紡、これは大事な物だからさ、ぜひ受け取って欲しいと思うんだ」
言いながら差し出された紙袋を見つめ続け、この中にいったい何が入っているんだろうと思いながらそっと受け取った。
旭「城戸さん、開けてごらんよ?」
『え、っと···あ、はい···』
東峰先輩からもそう言われ、元から手に持っていた記録用のノートを床に置き、受け取った紙袋をゆっくりと開けながら中身に目を落とす。
『これは···?!』
驚きのあまり、上手く言葉が紡げず思わず澤村先輩の顔を見上げた。
澤「ほら、遠慮しないで出してみなって」
早く早く!といった感じで勧められ、微かに震える指先に力を入れて中身を触る。
この感触···よく知ってる触り心地。
何度も、何度も···この感触に触れながら、仕事をしてきた。
これを本当に···私に?
そう思うと、胸がいっぱいになってしまって···なかなか取り出すことが出来なかった。
菅「紡ちゃん?もしかして、気に入らない···とか?」
