第10章 烏野高校男子バレー部
このまま家まで着いてきたらどうしよう。
それより、家まで待たずに途中で何か起きたらどうしよう。
いろんな可能性を予想すればするほど怖くなり、足が震える。
よし、後5歩進んだら、振り向いて影山を呼んで走ろう!
それで、さっきの曲がり角まで戻ったら、桜太にぃか慧太にぃに連絡して、どっちか来るまで影山に一緒に居てもらおう・・・
そう決めて、私は鞄を握る手に力を入れる。
後、3歩。
後、2歩。
・・・・・・最後の1歩!
私は思いきり振り返りながら、頭に浮かべた名前を叫ぶ。
『か、影山!』
・・・ドンッ!・・・
走り出そうと1歩を踏み出すと、背後にいた誰かと衝突する。
嫌だ・・・怖い・・・
怖さの余り、下を向いてギュッと目を閉じてしまう。
影「なんだよ・・・」
その声に驚き、顔を上げる。
『か・・・影・・・山?』
影「だから、なんだっつんだよ」
声が震えてしまい、まともに話せない。
影山の姿を見て気が抜けたのか、その場にへたり込む。
影「・・・っ!おい、どうした?」
そんな私の様子を見て驚いた影山は、私の目線に合わせるかのように、しゃがんで顔を覗き込む。
『か、影山でよかった・・・』
微かに震える手で影山の袖口を掴んで、そこにいるのが本物の影山だと安心する。
影「は?何なんだよ」
『後からずっと誰かが着いてくるから、変な人だったらどうしようかと思って、こ、こわ、怖かった・・・』
影山にそう告げると、チッと軽く舌打ちされ、直後に頭を鷲掴みされる。
『あたっ!痛い痛い痛い痛いっ!頭潰れる~!』
影「お前な!さっきの曲がり角で家まで送るからって言っただろうが、このボゲェ!」
『き、聞いてないよ、そんなの』
影「い~や、言った。なのにお前はサッサと歩いて行ったと思ったら、立ち止まったり、そうかと思えば早足になったり、何やってんだ?と思えば・・・人を変人扱いしてたのか?!」
いや、ホントにそんなこと聞いてな・・・
あれ?
さっきもしかして別れ際に何か言っていた様な・・・
思い当たる事に気がつき、ちょっと目を逸らした。
すると、影山は頭を掴んでいた手に、更に力をいれながら言う。
影「こういう時は?なんて言うんだっけか?」
頭を潰されそうになりながら、私は影山を見た。