第29章 ネコと呼ばれる人達
練習が始まって暫く経ち、いつものように武田先生とボール広いのお手伝いを続けている。
そう言えば···清水先輩はどこに行ったんだろう?
ちょっと前の休憩時間の時に、武田先生と何か話をしていて···その後から姿が見えないけど。
清「先生、戻りました」
武「あ、出来た?」
先生の声に気付いて振り返ると、両手にクリーニングの袋を持った清水先輩がいた。
清「みんなの大切な物を受け取りに行って来たの」
不思議そうな顔をした私に、清水先輩がニコリと笑って教えてくれる。
大切な物···あっ!
チラリと視線を移せば、袋の中からは背番号が見えた。
ユニフォーム···そう言えばこないだ、清水先輩が少し直しをしないと···なんて言ってたっけ。
武田先生が繋心に何かを伝えに行き、それを受けた繋心が澤村先輩に声をかけて、キリのいいところで練習を中断させユニフォームを1人ずつ配り始めた。
日「おおっ~!!テレビで見たやつ!···ん?ノヤっさんだけオレンジだ!!目立つ!!」
西「そりゃお前、オレは主役だからな!」
日「主役!おおーーーっ!」
いや、西谷先輩だけ色が違うのは···まぁ、ちゃんとした意味があるんだけどね。
私も···昔はそうだったし。
みんなが赤いユニフォームの時は、私は白いユニフォームで。
みんなが白いユニフォームの時は、私は赤いユニフォームで。
それがいつの間にか、みんなと逆のユニフォームを着なくなって···ポジションも変えられて。
最初の頃は納得出来ないままプレーしてたけど、でも、それでもバレーが好きだからずっとコートに立ち続けていた。
もちろん、最後の方は練習がキツくて逃げ出したくなる時もあったけど。
その度に愚痴る私に、ハジメ先輩が逃げるな!って叱ってくれて。
そんな事でさえ、懐かしいと··そう思える自分がいて。
それだけ少しずつ、ここのみんなの存在が大きくなってるってことなんだなぁと自覚する。
1度はドン底に落ちてしまったけど、それでもまだバレーが楽しいって思わせてくれるのは、私をここに引っ張り出してくれた澤村先輩達みんなのおかげだと思う。
本当の意味で、バレーから離れなくてよかった。
日「···影山がヒトケタ」
「「 言うと思った! 」」
影「1年でユニフォーム貰えるだけありがたいと思え!」
