第29章 ネコと呼ばれる人達
~縁下side~
コーチがみんなに向けて見せた作戦ボード。
そこには当然、オレの名前なんてコートの中にはなくて。
感じた事と言えば、やっぱりな、位で。
悔しいとか、なんかそう言った感情なんて出なかった。
西谷が戻り、旭さんも戻ったいま。
それでいいんだと言い聞かせるように目を閉じ、コーチの話を聞いていた。
繋「早く準備しろ!時間は限られてんだからな!」
そう叫ぶコーチの声に流されるように、ボールケースを運ぶ。
西「旭さん!スガさんはともかく、縁下に申し訳ないとか思ってんじゃないですか?!」
旭「えっ」
「えぇっ?!」
予期せぬ方向からの発言に間抜けな声をあげ、動揺した。
西「強い方がコートに立つ!これ、当然です!」
西谷ホント頼むから旭さんにそんな堂々発言すんなって···勘違いされたら困るだろ!
「あの···旭さん。オレ、ずっとひたむきにやって来た訳じゃないです。1度逃げ出した事もあったし、だから···」
西「心身ともにエースより強くなったら、正々堂々、旭さんからレギュラー奪いますよ!なぁ、力!!」
「えっ?!そこまで言ってない···」
西「あぁ!レギュラー奪われるとしたら先に龍か!」
まて西谷!
そんな事を大声で言ったら!!
田「上等だコラ!かかってこいや縁下コラァ!」
ほら田中が来たァ!!
田中がオレのシャツを掴み、グラグラと揺らしながら威嚇して来る。
「西谷!もういいからやめろってばぁ!」
オレの悲痛な叫びも届かず、まだ西谷は旭さんと何か話してるし!
だ···誰か助けてぇ!!
『あっ!ちょっと田中先輩?!準備サボって何してるんですか!!···ほら縁下先輩から離れる!』
田「だってお嬢!」
『だってじゃないです!!早く練習の準備!わかりましたか!』
田「ス、すんません···」
···た、助かった。
さすが城戸さん、猛獣の扱いには慣れていらっしゃる。
小さなマネージャーに叱られてオレから離れた田中にホッとしながら、小さく息を吐いた。
「ありがとう城戸さん、助かったよ」
『これくらいなら、いつでもお助けしますよ?なんかこういうの、いつの間にか影山と日向君ので慣れちゃってますから』
あっけらかんと言う城戸さんに笑いながら、じゃあ次があったらまた宜しく!とオレも笑って返した。