第29章 ネコと呼ばれる人達
~東峰side~
澤「旭、スガはどこ行ったんだ?」
大地に言われ、さっきまでいたけど···と返しながら周りを見ると、そこにはスガの姿はなかった。
澤「自販機行こうかって言おうとしたらいないからさ。先に行ったのかな?旭も行くか?」
「だな、なんか甘いの飲みたいしオレも行くよ」
小銭を持って大地と階段を降りていくと、自販機の前に立つ烏養コーチとスガの姿が見えた。
菅「大地と旭と、1年の時からやって来ました。一緒のコートに立ちたいです···ワンプレーでも多く。影山が疲れた時、何かハプニングがあった時···穴埋めでも、代役でも、3年生なのにかわいそうって思われても···試合に出られるチャンスが増えるなら、何でもいい」
スガ···?
澤「旭、ちょいコッチ···」
大地にシャツを引かれ、壁際へとそっと移動する。
菅「正セッターじゃなくても、出る事を絶対に諦めない。その為には、よりたくさんのチャンスが欲しい···」
繋「菅原···」
菅「生意気なこと言って、すみません···」
スガ···オレだって、お前とずっとやって来たんだ。
だから、オレも大地も同じコートに立ちたいって気持ちは分かる。
繋「菅原···オレはお前を甘く見てたようだ。正直いま、お前にビビってる···」
菅「は、はぃ?」
繋「オレはまだ指導者として未熟だが、お前らが勝ち進むために···オレが出来る事は、全部やろう···」
菅「···お願いします!!」
誰にも相談せず、スガは1人で···そんな決断を···
澤「···気合い入れるぞ。1回でも多く勝つ」
「おぅ···」
大地もきっと、スガと影山の事は考えていたと思う。
だからこそ、敢えて何も言わずに···今日まで。
躓いて、部活に来なくなったオレを···スガも大地も、待っていてくれた。
復活して、やっとまた前みたいに3人で同じコートに···って思っていたオレは、甘かったんだろうか。
澤「旭、一応言っとくけど」
「えっ、な、なに?」
無意識に押さえた胸から手を外し、大地を見る。
澤「そのガラスハート、強化ガラスか防弾ガラス位にレベルアップしとけよ?」
目だけは決して笑っていない大地の笑顔に、分かってるよ···と小さく返した。
オレも···スガみたいに強くならなきゃいけない。
スガの後ろ姿を見て、そう思った。
