第29章 ネコと呼ばれる人達
~菅原side~
やっと日向を見つけ、残りのロードワークをこなしながら日向と学校への道のりを走る。
遅れを取り戻すかのように、でも、さっきみたいな暴走はしないように走る日向を見て、一生懸命なのが伝わって来る。
「日向はホント、どんな練習でも全力だなぁ」
日「はい、でも、もっと練習しなくちゃ。オレ、まだまだ力が足んなくて···影山とセットじゃなきゃ一人前扱いされないのは悔しいけど。でも、それでも試合に出たい···オレ、コートに立ちたいです」
日向···
「オレもだよ。オレも···コートに立ちたいと思うよ。だからオレは、オレのやり方で戦う」
そうだよな、日向。
どんなに小さな可能性であっても、それは絶対にムリだって事じゃない。
オレだって···諦めている訳じゃないんだ。
「ほら、昼飯遅れるぞ!」
日「オーッス!」
前に···進まなきゃ。
練習が終わって合宿所に戻り、みんなが部屋でゆっくりしてるのを見て、オレはそっと部屋を出た。
確か···さっきは武田先生と話をしていたから···あ、いた。
階下に降りて辺りを見回すと、ちょうど自販機でコーヒーを買う烏養さんを見つけて声を掛けた。
繋「なんだ?」
「烏養さん、オレら3年には来年がないです」
繋「···あぁ」
来年はもう、ここにはいない。
改めてそれを思い、小さく深呼吸をする。
「だから、1つでも多く勝ちたいです···次に進む切符が欲しいです。それを取ることが出来るのがオレより影山なら···迷わず影山を選ぶべきだと思います」
オレの言葉に、烏養さんの瞳が僅かに揺れる。
でも。
これが、オレの出した決断。
大地にも旭にも、他の誰にも相談さえせずに決めたオレの決断。
「大地と旭と、1年の時からやって来ました。一緒のコートに立ちたいです···ワンプレーても多く。影山が疲れた時、何かハプニングがあった時···穴埋めでも、代役でも、3年生なのにかわいそうって思われても···試合に出られるチャンスが増えるなら、何でもいい」
気持ちとは逆に、微かに指が震え出す。
それを押さえ込むように、ギュッと手を握った。
これでいい、それでいいんだ···
自分で出した結論で、オレもみんなも···一緒に前に進む事が出来るのなら···それで、いい。