第29章 ネコと呼ばれる人達
~黒尾side~
「まったく、迷子になるから歩きスマホやめろって言ったのに」
研「ごめん、クロ···」
そう言いながらも、研磨はスマホを弄りながら歩く。
「ほれ、荷物1個寄越せ。みんなを待たせてんだから走るぞ」
もたつく研磨からバッグをもぎ取り、行くぞ?と声を掛けて走り出す。
研「そう言えば、クロがコッチに来てていいの?」
「今更。体育館は海もいるし、お母さんやっくんがいるから大丈夫だ」
研「クロ···やっくんが聞いたら、多分···怒る」
へーきへーきと返しながら練習試合を組んで貰った学校までの道のりを走り抜けると、さっき通ったばかりの道に出る。
そういやあのお嬢ちゃんは無事に探し人に会えたのか?
ま、電話来てたくらいだし大丈夫だろ。
ん~、でもやっぱ···名前くらいゲットしとけばよかったか?
オレはたいして名乗ってねぇけどな。
研「クロ、なんか楽しい事でもあった?」
信号待ちで足を止めた研磨がオレを見て不思議そうな顔をする。
「楽しいっつーか、迷子のお嬢ちゃんに会っただけ」
研「お嬢ちゃん?···クロ、犯罪はダメ」
「するかっての!お、信号変わった。行くぞ研磨、この信号を渡ったらすぐだから。学校ついたら早く支度しろよ?」
研「うん、わかった···」
あと数日はコッチに滞在中なんだから、縁があったら···あのお嬢ちゃんには、また会えるだろ。
そんときゃ、名前くらい聞いてやりますかね···っと?
「ナイスやっくん!」
夜「は?···って、クロか」
目的の場所のドアから、都合のいいタイミングでやっくんが出て来て研磨を預ける。
オレはそのまま便所に向かって用事を済ませ、体育館へ戻るとヒソヒソ話が聞こえて来た。
大抵、初めての学校に行きゃ聞こえてくる会話だ。
「キミらの言うひょろっひょろのチビとは···」
何の前触れもなくドアに手を押し当て声を掛ければ、予想通り驚いて振り返る顔が向けられる。
「オレたち音駒の···背骨で、脳で···心臓デス」
···そう。
ウチのメンバーの誰より、頼りなさげに見られがちな研磨こそ。
今の音駒の、なくてはならない···ブレーンだ。