第10章 烏野高校男子バレー部
いろいろと聞きたい事があるのに、言い出せない感じを読み取った私は、自分から話を振ってみる。
『菅原先輩、なんかソワソワしすぎです。聞きたいことがあるなら、答えられる範囲でお話しますよ?』
菅「えっ?あ、じゃあ、えっと・・・まずはゴメン!」
急に立ち止まり、菅原先輩が頭を下げる。
『菅原先輩、やめて下さい。それにゴメンって何のことですか?』
菅「いや、その、昨日の昼休み・・・いろいろと」
あぁ、あの事か・・・
『そんなに気にしなくて大丈夫です。あれくらい転んで擦りむいたのと同じくらいですから』
菅「紡ちゃん・・・見た目と違って、なんだかワイルドだね・・・」
目を丸くしながら、菅原先輩は私の言葉に驚いている。
『それに、あの時の菅原先輩の言葉がザックリ刺さって、私は自分の嫌なところを見て見ないふりをしている事に気がついたんです』
菅「そ、そんなに刺さったの?!・・・なんかゴメン」
謝らなくていいって言ってるのにも関わらず、何度もゴメンと繰り返す菅原先輩がおかしくて笑ってしまう。
『まぁ、見つめなおして、どう変化をもたらすのかは未知数なんですけど。だから今は、自分がどれくらい出来ることがあるのか試してみようって』
菅「もしかして、それで?」
『日向君と、それから菅原先輩にあんなにお願いされたら断り続けるのも、ちょっと罪悪感が』
そう言って笑い返すと、菅原先輩はそっかそっか!ありがとう!と言いながら私の両手を掴みブンブンと振り回す。
そんな事をしているうちに体育館前に着く。
中からは既にボールの音がしていた。
菅「やってるな~。じゃ、紡ちゃん、入ろうか?」
そう声をかけて扉に手を伸ばす菅原先輩の手をとっさに捕まえて、ちょっと待ってと目で送る。
私はそのまま、大きく大きく深呼吸して、それから菅原先輩を見た。
ニコニコっとすると、菅原先輩は扉をガラッと開けた。
菅「おはよー!さっそく始めてるね?」
菅原先輩の背中に隠れていたから、私からは見えないけど、その声を合図としてバタバタと人の集まる気配がした。
日「菅原先輩!おはようございます!」
影「おはようございます」
田「スガさ~ん、ちょっと遅刻じゃないんすかぁ?」
3人がそれぞれらしく菅原先輩に挨拶をしてくる。
菅「遅刻って言ったって、いつもの田中より早いだろ~?」