第29章 ネコと呼ばれる人達
さすが社会人···そして大人···
丁寧に菅原先輩を遅くまで引き留めてしまった事を謝罪して、それから···本題へと入り、呆気なく城戸家に1泊する了承を得てしまった。
桜「いえ、着替えなどはご心配なく。自分も弟も、彼と背格好が近いのでそちらを···えぇ、食事も大丈夫ですよ、お母様」
お、お母様?!
絶対···慧太にぃの口からは出ない言葉だと思って、チラッと慧太にぃを見てしまう。
···ない、絶対出ない。
慧「なんだ紡、何か言いたそうな顔しやがって?ん?」
『べっつにぃ?』
多分、お仕事してる時は慧太にぃもちゃんとしてるんだと思うけど。
家での立ち振る舞いが···これだからね。
自他ともに認めるカリスマ美容師って位なんだから、マダムキラーはむしろ···慧太にぃの方なんじゃ?
っていうか、他はいいとして。
自分でカリスマとか···中学生みたい。
『いたっ!いたたたっ!···慧太にぃ頭掴むのやめて···』
慧「うっせぇ紡。お前絶対いま、オレに対して失礼な事を考えてんだろ」
『違ッ···くもないこともない···けど、離してよ!』
慧「やっぱ考えてんじゃねぇか!コイツ!···痛ッ!」
パシッという音がして、私の頭が慧太にぃの手から解放される。
見上げてみれば、桜太にぃが電話で話しながら慧太にぃに制裁をしたようで、それを見て菅原先輩がまた笑いを堪えていた。
桜「それでは、きちんと学校へは送り出しますから。はい、はい···御免下さいませ、失礼致します」
ふぅ···とひと息吐いて、桜太にぃが菅原先輩に笑いかける。
桜「大丈夫だったよ、菅原君。夜更かししないで早く寝なさいと伝えて欲しいって」
菅「いや、そこまで子供じゃないんだけどなぁ」
慧「親御さんからしたら、幾つになっても子供なんだろ」
『じゃ、慧太にぃもだね!』
さっきのお返しとばかりに言って、菅原先輩の後ろに隠れた。
慧「紡···ケンカ売ってんなら、買うけど?」
桜「そういう所が子供なんだよ、慧太は」
ホント、そう思う。
双子で同じ歳で···とか、比べるワケじゃないけど。
桜「さて、泊まりと決まったら···菅原君、お風呂どうぞ?着替えは出しておくから」
菅「あ、はい。ありがとうございます」
明日は家から一緒に登校、するんだよね···とか、そんな事を考えていた。