第29章 ネコと呼ばれる人達
~菅原side~
もう、こんな時間か···
何度目かも分からない寝返りをうって、スマホで時間を見る。
成り行きで紡ちゃんの家に泊まることになって、客間に案内されたけど。
···寝れない。
その一言に尽きる。
別に枕が変わったらとか、そういうのじゃなくて。
落ち着かないっていうか、なんと言うか。
誰かの家に泊まるくらいは何度だってあった。
それこそ、大地の家とかさ。
だけど、こうも落ち着かないのは···やっぱり泊まった場所が、場所だからなんだろうなぁ。
「はぁ···」
なんとなくついた溜め息でさえ、部屋に響く感じが何とも言えなくて···また、寝返りをうつ。
ちゃんと睡眠取らないと、朝練に響くよな。
授業は···まぁ、それは何とでもなるからいいけど。
練習は、毎日の小さな積み重ねがいざという時にモノを言うから。
特に、いまは。
オレ達は、これから過ごしていく毎日が···最後になる。
影山っていう超天才的なセッターが入って来たからって、立ち位置を譲るつもりはない。
いつでも、影山と代われる心構えと技術を備えていないといけない。
必要とあらば、ダブルセッターだって考えられる。
高校最後のひとつずつの大会、ムダにはしたくない。
その為には···合宿を無事終わらせて、音駒との練習試合を経験として吸収しないとな!
うん、考えは纏まった。
けど、やっぱり眠れそうにないから水でも飲んで来よう。
桜太さんが朝までに何かあったら自由に冷蔵庫開けていいからって言ってくれてたし。
ゴソゴソと起き出し、リビングへ向かう為に階段を降りていくと、桜太さんと鉢合わせた。
桜「もしかして、寝付けない?」
風呂上がりだろう濡れ髪で微笑む姿は···男のオレでも、なんか···ヤバい位の大人の···男の色気、みたいなものにあてられてしまう。
「アハハ、まぁ、少し···何かいろいろ考えてたら目が冴えちゃって」
桜「慧太の思い付きで、急な予定変更だったしね?」
フッ···と笑いかけてくれる桜太さんは、それはもう色香を振り撒いているようで、クラクラとしてくる。
オレ、ヤバいな。
紡ちゃんのすぐ近くにこんな人がいるから、紡ちゃんはきっと自然と目が肥えてるんだ。
バレー以外にも、もっと自分磨きも頑張らないと!
そんな事を考え、立ち尽くしていた。