第28章 オトリの凄さ
菅原先輩と家までの道をゆっくりと歩く。
学校を出る時は、なんかモヤモヤして、気持ちが後ろ向きになっていたけど···
そんな私のネガティブな気持ちを察したのか、菅原先輩は···諭してくれた。
こんな時、澤村先輩もそうだけど···ふたつの歳の差は大きいんだな、と思う。
きっとそれを言ったら、そんなの歳の差になんか入らないよなんて、笑われてしまいそうだけど。
もし。
もし、私が二年早く産まれていたら···世界は変わっていたんだろうか?···なんて、ちょっとだけ考えて見る。
そしたら私も清水先輩と同じ学年で、マネージャーをしていたんだろうか?
そもそも、烏野にいるんだろうか?
ひょっとしたら、烏野ではなく···別の···
あ~···やめよう、こういう考え事!
せっかく菅原先輩が気持ちを切り替えるスイッチを押してくれたっていうのに、ダメじゃん、私。
切り替えて、落ち込むのはさっきで終わり!
隣を歩く菅原先輩をチラリと見て、ちょっとした違和感に気づき···思わずじっと見てしまう。
菅「ん?どうかした?」
『えっと、なんか不思議な感じがして···いつも隣を歩いてるのは影山で、だけど今はスガさんだから···目線の高さが、違うなぁって』
菅「あはは、そんな事?影山はデカいからね、オレより。でも、そんなに差がある?」
『ほんのちょっとですけど、いつもと違うなぁって。でも、バレー部のみんなは背が高いから羨ましいです。自分は小さいって騒いでる日向君でさえ、私よりは遥かに背が高いし』
いいなぁ···なんて繰り返すと、菅原先輩は笑い続けた。
菅「そんなに背が高くなりたい?」
『それはもう!だって私、自分の家のキッチンに立つ時、慧太にぃの作ってくれた踏み台がないと届かない場所たっくさんあるんですよ?···なんで私だけ、小さいんだろう』
両親も桜太にぃも慧太にぃも、みんな背が高いのに。
菅「オレは今の小さい紡ちゃんのままで、充分カワイイからいいけど?」
『小さいとか···拗ねますよ?』
菅「いいよ、拗ねても。カワイイから許す!」
『許されなくてもいいから背が欲しい···』
菅「結局またそこに戻るのかよ···」
そんな事を言い合いながら、菅原先輩に家まで送って貰い···また明日、学校でね?という約束をして別れた。