第13章 迎賓と少女
部屋を開けると、三日ぶりに窓を開け、軽く換気をした。
部屋には一面中散らばっている絵と小学生向けの本、雑誌数冊、大量の古書、片隅にある女性ものの服が妙に浮いていて気になった。
「覚えてないと思うが、お前はここにいたんだ。」
「…そうなのですか。」
「何か思い出せるか?」
「…いいえ…。」
目を伏せると睫毛のラインが見える。
やはりダメか、とクロロは静かに溜め息を吐く。
ベッドに横になるように促すと、少女はそれに従った。
「あの…色々なことが変化していてよくわからないのですが、わたくしはどのくらいの間の記憶がないのですか?」
「お前が俺を知ったのは10年前だと母親に聞いたな。」
「…10年!」
「ああ。その間、カヅキの分家に預けられ、閉じこめられていた。」
「…閉じ込められる?何故でしょう?わたくしは何か、お母様に逆らってしまったのでしょうか?」
「……。」
ルルがカヅキ家で一体どのように生活しているか、まだ掴めないでいた。
あんな感情のない表情になるほどに。
「お前を閉じこめていた奴らは俺達が全員始末した。」
「何故、わたくしをお助けになられたのですか?」
「…なんでだろうな。」
ルルは純真な目でクロロを見つめて聞いた。
しかし、その視線が痛くて辛い。前の彼女になら、きちんとした答えを言えたのだろう。
今の彼女に言ってしまうと、ルルを裏切ってしまう気がした。
同じ人物なのに……。