第13章 迎賓と少女
朝を迎えると、一本の電話が入ってきた。
「お客様がお見えです。」
やはりフロントにはスーツ姿のヒソカと、ヒソカに揃えてもらったのか見たことのない服装のルルがいた。
パステルカラーのふわっとしたシルクワンピースで、幼い姿の彼女にとてもよく似合っていた。
「ルル…!」
彼女の姿を見ると、名前を呼ばずにはいられなかった。
「昨日の電話では申し訳ありませんでした…。わたくしを助けてくださったとお伺いして、深く反省しております…。」
クロロが名前を呼ぶと、ルルは綺麗にお辞儀して謝罪をした。
まるで別人のような冷たい表情と、丁寧な言葉遣い。
顔は、身体は、香りは、そのままの彼女なのに。
やはり彼女の記憶に自分の姿は一つも残っていない。
そう考えると、虚しくて、悲しくて、思わず奥歯をくっと噛みしめた。
クロロの表情が変わると、ヒソカはにやりと笑わずにはいられない。
「いや、お前が謝る必要はない。」
いつもと態度を変えずに平静を装って言う。
「もしお前が良ければ、その、まだうちで過ごそうと思わないか?」
「え…?」
「ルルちゃんは覚えていないかもしれないけど、ずっとうちにいたんだよ。」
シャルナークが補足して言う。
「カヅキの家、いたくないんだろう?」
「…!」
ルルは、なんでわかるの?という表情で周りの4人を見渡した。
「ご迷惑ですので…。」
「迷惑じゃないよ。うちはもともと人数多いんでね。一人増えたところで変わらないよ。」
冷たいが、暖かくマチが言う。
「…あ、あの、本当によろしいのですか…?」
ルルは涙をぽろぽろ流しながら言った。
相当酷い仕打ちにあってきたのだろう。
やっと彼女の表情を垣間見ることが出来た。
それだけなのに、クロロは安心しきったように笑う。