第9章 真実と少女
彼女の気持ちは一切無視されて一通り進んでしまう物語。
まるで、人生を勝手に作られているようだった。
その事実に憤りを感じ、気づいたら立ち上がって、隣のソファーで横たわっている彼女を肩に乗せていた。
「あら、お帰りですの?」
「ああ。こいつをお前の元に置いておくのは、なんか違う気がしてな。」
「ふふ、それが本の効力ですわ。貴方は彼女に愛情をしっかり抱いていますもの。」
「…本に関する記述を読んだんだが、名前を消せば契約破棄になるそうだな?」
「!!」
前回、もう一つの屋敷で盗んだ記述はそこまでが記載されてあった。契約と代償までは分かっている。
「残念でしたわね、本は旅団の方に盗まれてしまいましたの。そこにいる道化師のような方に。
団長さんなら、どなたかわかるのではないかしら?」
「……。」
そのまま黙ってカヅキの大豪邸を二人は後にした。
「奥様、引きとめなくてよろしかったのですか?」
「ええ。もう十分データが取れましたわ。クロロ様は…本当に面白い方ですわね。」
真っ暗なホームで、シャルナークのパソコンだけがちかちかと光っていた。
「あ、おかえりー。ルルちゃん無事でよかったねー。」
と挨拶するものの、いつも通りの沈黙。
ルルを肩に乗せたまま、部屋へと入っていった。
ベッドの真ん中に彼女を寝かせ、その横に腰掛ける。
深いため息が出てしまった。
もやもやする。本一冊でここまで運命が動かされるということに。
そしてルリアの発言。結局ルルは都合のいい人形だったということ。
家族、人、として必要とされているわけではなく、人形。
人権のない、そんなところまで自分と同じだと思ってしまった。
「全然、違うのにな…。」
ふっと笑うと、ゆっくりルルが瞼を開けた。
「あれ…?おかいものは?」
と寝ぼけた顔で聞いてきた。
「…また明日行こう。今日は色々あったし、疲れただろう?」
ルルは頷くとクロロの顔をじっと見つめた。
「なにか、あったの?」
と口ぱくで心配そうに尋ねた。
なんでも筒抜けなんだな、と思った。
彼女の心配そうな顔が可愛くて抱きしめた。