第8章 携帯と少女 裏
街に出て、携帯を買うと、背後に尾行している連中の気配を感じた。
「念能力者、じゃないな。」
明らかに素人の者。何故蜘蛛の頭がこんな素人に、と鼻で笑う。
朝から何かの気配はあったが、ようやく自分に向けられているとわかった。
いつも殺気立った気配なのに、なんだか怯えている。逆に解りづらいというわけか。
尾行している三人の男の背後に周り、首に冷たい感触のナイフをあてる。
「ひっ!」
「朝からご苦労なこった。なんのようだ?返答によってはその首が飛ぶ。何も答えない場合もそうなる。」
「ひいぃぃぃ!!すいやせん!言います!言うからっ!」
殺気にあてられ、三人が急におびえはじめ、がたがたと身体をふるわせた。
「俺達はこの前あんたたちが襲った屋敷のもんだ…!下っ端だが。」
「ひ、被験体の女を盗んだだろう!?」
「被験体?ルルのことか。」
「な、名前は俺たちも知らねえ。そいつを返して欲しいんだ…!」
「誰の命令だ?」
ぐっとナイフに力を込める。
「お、お、お、奥様だよ!!」
「悪いな、彼女のファミリーネームを俺は知らないんだ。」
「や、屋敷を壊滅させておいてそれはないだろう!?」
「盗む物以外、興味がわかないんだ。悪いな。」
「くっ…!カヅキだよ……。」
クロロは男三人の首に軽く手刀を入れるとその場で気絶させる。
「よかったな、今日俺が人殺しする気分じゃなくて。」
まだ何故自分に対して素人を送り込まれたのかわからなかった。
顔は多分、残っていた監視カメラか息のある警備員に撮られたか覚えられたかしたのだろう。
あの日、ひどく高揚していたのを思い出し、それ以上の情報が漏れていてもどうにもならない、とふと思い、足取り軽く帰路についた。