第8章 携帯と少女 裏
ひとつ解決されるとまた次の謎が顔を出した。
しばらく考え、答えが出なかったのかシャルナークに視線を向け、何か調べられたか聞いた。
「ルルちゃんがいた屋敷からちょっとのところに、カヅキっていう豪邸があるんだけど、この前盗んだ《夢を叶える本についての記述》の一部があるそうなんだ。
ルルちゃんとなんか繋がりがある家かもしれない、と推測まではしたんだけど。」
ガセネタじゃないといいけど、と付け加えてここ最近わかったことをシャルナークは一息で述べた。
「可能性として、そこの血縁という可能性はあるな。だが、なんで別の屋敷に移し、閉鎖空間に閉じこめていたのか、だな。」
「実際に行ってみる?」
「…や、とりあえずカヅキの屋敷がある町に数日泊まり込んで情報を掴んでくる。」
本の情報が第一だ、と本来の目的を確認した。
「本についての記述を読んだが、念で確実にその願い事を叶えるようだ。
だが、それなりに身体に負担がかかる。一般人はおろか、念能力者でも命を落とす可能性がある。」
「そんな危ないもんなのかよ!」
大男何人かが声をあげた。少し滑稽である。
「安心しろ。その本は女にしか書き込みが出来ない。」
「じゃあ団長が入手してもしょうがないんじゃん?」
「なんの為に俺がルルに読み書きを教えたんだ?」
「なるほどね。」
団員たちとのやりとりで着々と次の目的と段取りを決めていく。
ルルはその状態を静かに眺めていた。
終わる頃、ぞろぞろと解散していき、ようやく彼女に声をかけられた。
「待たせて悪いな。しばらくはここに住む。」
手を差し伸べられたので、ぎゅっと小さい手を掴み、俺の部屋まで案内した。
溢れかえる古書に一瞬驚いていたが、ホテルでも割とよく見る光景だったのですぐ落ち着いた。
「することがないだろうと思うが、大人しくここにいてくれ。外には出るな。危ないから。この家の中なら動いていいぞ。」
ルルは頷き、理解したことを伝えた。
古書の山を一人で片付け、ようやくキングサイズのベッドが姿を見せた。
シーツの張り替えも丁寧に行い、持ってきた荷物を広げる。
ベッドで横になったルルは、既に寝息を立てていた。