第6章 蜘蛛と少女
いつもの中華食堂に着くと、もう他のメンバーはそろっていた。
「おっせーぞー!注文しちまったぞー!」
と大声で呼ぶ大男二人が見えた。
「悪い、今夜は俺のおごりだ。」
クロロはそう言い、少しだけ口元を緩めた。
「今回の主役のルルだ、よろしく。言葉も礼儀も躾もなってない。あまり変なことを教えるなよ。」
な、シャル。と呟きながら金髪の青年を睨みつける。
シャルナークはさっと目をそらし、何食べるー?とルルに食べたい物を聞き始めてその場をやり過ごす。
「シャル、ルルはここだ。まだ箸の使い方を教えていない。」
少し苛々した雰囲気で、クロロはルルに膝の上にくるように命令した。
彼女はだまって従い、クロロの膝の上でメニューを開いて写真を見つめていた。
「料理は大量にくるから、ちょっとずつ色々な物を食べるんだぞ。」
ルルはその言葉に頷いた。
周囲が少しざわついた。
案の定後先考えずに、メニューの端から端を全部!と注文している大男二人がいた。
テーブルの上には乗りきれないくらいの量の料理が並べられていく。
赤を基盤としたぴりっとした刺激の香りがその場を漂い始める。
クロロはラーメンの器を取ると、目の前に置き、ルルに簡単な箸の使い方を説明した。
そのまま麺をすすると、ルルにやってみるように促す。
他、炒飯の食べ方、中華スープの食器の使い方、小物料理の食べ方を少しずつ説明する。
ルルは一通りの料理を2口ずつ食べると、満腹、とクロロの胸に背中を凭れる。
「なかなか食べる量が増えないな…。」
「朝のおやつの時から気になってたんだけど、ルルちゃん凄く小食だよね?」
「今までパン二切れと水しか口にしたことがない。」
「あんな屋敷に住んでて?」
「そうだ。で、お前にその経緯などを調べるように言っておいたはずなんだがな?」
「明日頑張りまーす…。」
最後に一口、とクロロは自分の杏仁豆腐をスプーンに掬い、ルルの口に流し込んでやった。
すぐに目を見開き、美味しそうにもぐもぐと噛みしめるルル。