第6章 蜘蛛と少女
蜘蛛の手足は、酒で盛り上がり、ようやく料理が片付き始めたところでルルの存在に興味を示した。
食べ物があるとそこにしか意識がいかないようだった。
そしてやはりその調子で聞いてしまった。
「で、団長はどこまで調教したんだ?」
沈黙が流れたことを確認すると、なんでもないです、と男三人は首をひっこめた。
ルルは首を傾げ、毎回何故この質問をしてくるのか近くにいたシャルに口パクで聞いた。
シャルは少し困った笑顔をして、
「団長に幸せになって欲しいからだよ。」
と答えた。間違いではないが、正解でもない。
テーブルの端から皆名前を言ってくれたが、一気に名前を覚える程出来た頭ではない。
ルルは何度も復唱して覚えようとしていたが、
「どうせアジトにまた来るんだろう?その時でいいぜ!」
とウボォーギンが大声で言ってくれたので、ひとまず、聞くだけという形を取った。
帰りもシャルナークが運転する車でホテルまで送ってもらった。
「お前とはまた明日、な。」
「本気?」
「と、言いたかったのだが、しばらくこいつの面倒を見る。一週間後にはこの街を出る。それまでに情報を集めてくれ。」
「…!了解!」
その延長が何を意味しているかわからなかったが、どうやらしごかれるのが先延ばしになった。
それだけでもかなり落ち着いて作業出来ることに安堵のため息を漏らす。
車を出そうとすると、笑顔で手を振って、またね、と口パクで言うルルがいた。
手を振り返し、車を発進させ、しばらくしてようやく、
「大切にしてるなー…。」
と一日の感想を一言で済ませた。
願わくば、二人が幸せに暮らせますように。