第5章 買い物と少女
マチが持ってきた私服をルルに着せる。
キャミソールと短パンとパーカーだ。初めてYシャツ以外のルルを見てクロロが少し驚いている。
「可愛いじゃないか。」
言われた本人であるルルが赤面するが、何故か隣にいたマチもすっかり赤面していた。
初めて見た団長の姿に吃驚したのだろう。
「なんでマチまで俯くんだ?」
「団長も、そういうこと言うんだな、と思って…。」
なんだそれ、とクロロは乾いた笑いを漏らした。
「気をつけて行くんだぞ。」
ルルは小さくうなずいた。
「夕方には帰ってくること。」
クロロの言葉を一個一個確認するようにうなずく。
「それから…。」
「団長!もう、行くから。」
「あ、ああ、すまない。お前がいるなら安心だな。」
二人を見送り、ホテルの部屋の扉が閉まってから、何言ってるんだ自分は、と嘲笑した。
すっかり親のようである団長を正直気持ち悪いと思わずにはいられなかった。
意外性もあったのだが、そこまでこの少女に固執する彼がいまいち理解出来なかった。
こんなことで揺らぐ忠誠心ではない、と思いつつも、見た目明らかに10近くも年下の少女に
真剣に物事を教え、衣食住を与え、ましてや礼儀の躾も行っている。
この執着は普通ではない、そんなことを考えながら、マチはルルと二人で買い物に出かけた。
ホテルの前には、いつも乗っている車があり、シャルナークが、クラクションを2回鳴らした。
「ルルちゃん今日可愛いねー。」
と挨拶すると、顔を赤らめて、ありがとう、と口パクで伝える。
ホテルからシャルナークが運転する車で15分程、大きなショッピングモールに行く。
車中では、始終、団長に何されたんだというシャルナークの質問攻め。
マチがそれに対して、下品、不潔、汚い、と淡々と罵倒していくというシュールな戦いが繰り広げられていた。
ルルは口パクで、
「一緒にお風呂入って、ご飯食べて、寝たよ。」
と素直に儘を言ったが、二人は絶句してしまい、車中には気まずい空気が流れた。