第8章 ~愛島セシルの場合~
みんなは協力するって言ってくれたけれど、こんな夜中では流石に頼れない。
パートナーと一度も合わせていない曲を練習するってこんなに大変なんだって初めて知った。
お互い、曲について思い描くものはきっと違くて、お互いの世界観を知って初めて一つの曲になっていくんだと思う。
だけど、パートナーの思い描くものが分からない今は、相手の考えを予想した上でこの曲と向き合わなければならない。
「もう…どうすればいいの?」
私の声に呼ばれたように、緑色の小さな光が私の周りを飛び回った。
そして…
「こんばんは。ワタシは愛島セシルです。
アナタを助けに来ました。」
その光の中から現れたのは、綺麗な緑色の目をした顔の整った同い年くらいの男の子。
「あの…。えっと…?」
何がなんだか分からない状況に困惑してしまう。
「アナタは今、悩んでいますね…?
けれど、その答えはもう出ている…。」
「答え…?」
曲のヒントをくれるのかな…?
「はい。それは…アナタの思いです。
アナタの周りに対する思いを歌に乗せれば良いのです。」
愛島さんはそう言って微笑んだあと、また光に包まれて消えてしまった。