第8章 ~愛島セシルの場合~
「思い…。」
困っている私に手を差し伸べてくれたAクラスのみんなへの感謝…かな…?
私は、この学園でのことや、みんなに対しての感謝を込めてもう一度歌った。
なんだろう…不思議な気持ち…。
悩んでいたことも無くなって、今の歌は一番しっくりきていた気がする。
「愛島さん…ありがとう。」
私は助けてくれたあの人のことを考えながら眠った。
数日後、パートナーの子と初めて曲を合わせたけれど息ぴったりだった。
相手の思い描くものに近かったようだ。
あのとき、私を助けてくれたあの人のお陰だ。
もう一度愛島さんに会って、お礼がしたい。
「力になれたのなら、良かったです。」
何処からか、愛島さんの声が聞こえた気がした。
けれど、姿を探しても見つからない。
「愛島さん!…会いたいです…。」
ギュッと目を閉じると…
「ワタシはここに居ますよ。
いつもアナタのそばに…。」
一番聴きたかった声に顔を上げると、愛島さんが微笑んでいた。
「愛島さん!ありがとうございました!」
私も笑顔でお礼を言う。
「アナタの笑顔が見られて良かった。」
愛島さんはふわりと姿を消した。
「愛島さん…。」
私はこの時、愛島セシルさんに…恋をしました。
まだよく知らない謎めいた人だけど、私を助けてくれた優しい人。
もっと知りたい、また会いたい…。
気がつくと、愛島さんのことを考えてしまうのだ。
私の片想いの色は…エメラルドのようなキラキラとした美しい緑色でしたー。