第9章 七色の片想い
ーあの人に片想いをして数年の月日が経った。
卒業オーディションでは大好きなあの人が優勝を手にし、CDデビューも果たした。
一方で私はシャイニング事務所には入れず、卒業オーディションに来ていた他の事務所の人に勧誘されて、そちらに入ることになった。
アイドルとしての活動は毎日忙しくて、学園時代が終わってからは恋なんてしてる暇も無かった。
実際に、今日だって音楽番組の収録がある。
恋なんてしないで仕事に生きた方が良いだろう。
…そう心に決めていた…はずだった。
スタジオに着いてから、共演者やスタッフの皆さんに挨拶をして回った。
そのメンバーの中には、見覚えのある姿があったのだ。
目が合うと、彼は学園に居たときと変わらない優しい笑みを浮かべた。
そして、彼は私に近づいてこう言った。
「会いたかった…」
運命のような再開と期待してしまうような言葉に、私はまた“恋”という気持ちを思い出した。
私の片想いの色は…見えたり見えなかったり、複雑だけど…どこかハッキリしている虹のように七色でした。