第8章 ~愛島セシルの場合~
教室に着くと、机の上に一枚のCDが置いてあった。
「何でCDが…?」
見覚えのないものに首を傾げると、
「あ、北橋!
これ、お前のパートナーから預かったやつ。
卒業オーディションの曲だってさ…。」
とクラスの子が教えてくれた。
「あー、なるほど!
わざわざありがとう!」
「おう!あいつ今日熱出して休みだからさ…」
…ってことは数日は一人でその曲を理解して歌うのか…。
出来るかな…?
「あー、そりゃあ大変だ…。」
「愛結美!?」
いつの間にか隣にいた愛結美は肩をすくめて言った。
「ごめん、さっきの会話聞こえちゃってさ…」
「…ううん、大丈夫。
でも、数日は一人で理解して歌わなきゃいけないから不安で…。」
ため息混じりに言うと、
「北橋は一人じゃ無いでしょ?」
「そうですよー!僕たちも一緒に考えますよ!」
「あぁ。卒業オーディションとなれば、余計に思い詰めてしまうだろうからな…。」
音也くん、那月くん、聖川さんが私の所に来て励ましてくれた。
「私も協力します!」
春ちゃんもそう言ってくれた。
「みんな…ありがとう!
私、頑張るね!」
Aクラスのみんなの優しさに触れて、さっきまでの不安はもうすっかり消えていた。
その日の夜、CDを聞いて何度も歌ったけれどいまいち納得がいかなかった。