第7章 ~来栖翔の場合~
ただでさえ無意識に翔くんを探したり、姿を見つけると目で追ってしまうのに、自ら会いに行くなんてしたら流石に翔くんも「オレのこと好きなんじゃないか…?」という風に気づいてしまうかもしれない。
片想いに気づいて、避けられてしまったら…って思うと怖くてたまらないのだ。
「まぁ、恋愛禁止だもんね…。
それに、唯と翔ってなっちゃんを通してたまに話すくらいだから会いに行くのも不自然か…。」
愛結美は、んー…と顎に手を当てて唸った。
「唯と翔が自然と話せる機会とかあればいいのにね!」
愛結美がそう言って笑った瞬間だった。
ガラガラッと勢いよく教室の扉が開き、そこから翔くんが顔を出した。
「おーい、北橋居るか?」
まさかの言葉に胸がドキリと鳴る。
「翔くん!」
小走りで翔くんの前まで行くと
「ん!」
と私にピンクのハンカチを差し出した。
そのハンカチは私のお気に入りの物とよく似ていた。
確か、今日持ってきたはず…。
ポケットを探るとハンカチは入っていなかった。
「コレ、お前のだろ?
よく持ち歩いてんの見てたから…。
階段に落ちてた。」
翔くんが拾ってくれたこと、私のものを覚えてくれていたこと、わざわざ届けてくれたこと…どれも信じられないくらい嬉しかった。
「ありがとう!覚えてくれてたんだ…!
このハンカチ気に入ってたから…よかった!」