第7章 ~来栖翔の場合~
学園に着くなり、私はいつものように周囲を見渡しながら歩いた。
理由はとても単純なもので、ただ、片想いの相手が居ないか探してしまうのだ。
私が片想いしているのは、Sクラスの来栖翔くん。
背は小さいけれど、とても男らしく強い心を持った翔くんのことが好きで仕方無い。
しかし、どんなに会いたいと思ってもすれ違うことも、見かけることも無いまま教室へと着いてしまった。
何で会いたいと思う時ほど会えないんだろう…?
「そーゆーものだよ、現実は…。」
「えっ!?」
私の心を読んでいるような突然の言葉に、肩がビクンッと跳ね上がった。
その言葉を発したのは友人の愛結美だった。
「愛結美! いつから心読めるようになったの!?」
「いや、声に出てたから…。」
愛結美は呆れ顔で言ったあと、
「それでさ…」
と私の肩に手を置いた。
「会いたいって思うなら、会いに行けばいいんじゃない?」
…会いに行く、か…。
確かにそうかもしれないが、それは出来ない。
「それは、だめ…。」
「え?なんで?」
「自分から会いに行ったら、好きなことバレちゃうじゃん…。」
そう、この学園は恋愛禁止だから好きな人が出来てしまったとしても隠し通さねばならない。