第4章 ~四ノ宮那月の場合~
そんな私の不安を感じ取ったのか、
「大丈夫だよ、あたしが居るんだから!」
と、愛結美は抱きしめる力を強めた。
思ったよりも早く準備が終わったので、まだ30分も前だが屋上へと向かった。
当然、屋上にはまだ誰も来ていなかった。
私は誰もいない屋上の真ん中で、ぺたんと脚を伸ばして座り、空を見上げた。
「距離を縮めるって…どうしていいか分かんないよ…。」
そのまま寝そべって、横向きになってつぶやく。
「本当に、分かんないや…。」
気が付くと、もう外は真っ暗になっていた。
どうやら、寝てしまったみたいで私の身体には制服のブレザーが掛けられていた。
「誰のだろう…?」
周りを見渡すと、隣に一人誰かが座っていた。
「おや、目が覚めましたか?」
この声は…
「那月くん…?」
「はい!そうですよー!
実は今日、曇りでお星さまが見られないみたいで突然中止になったんです…。
でも、とっても楽しみにしていたので、屋上に来ちゃいました!」
暗くて表情は見えないけれど、那月くんが笑っているのは分かる。
「中止か…。残念…。」
でも、このまま戻るのは勿体ない気がする。
とは言っても、せっかく二人なのに何を話していいか分からない。
そこで、ふと私に掛けられていたブレザーを思い出した。
「あの、これって那月くんの?」
那月くんに、ブレザーを見せる。
「はい、僕のです!
あなたが風邪を引いたら大変ですから…。」
那月くんは、心配そうな声色でそう言ってくれた。