• テキストサイズ

【NARUTO】火影の嫁

第2章 ぬくもりの分け方


優秀な部下や教え子たちに発破をかけられて、やっと漕ぎ着けたデートは、しかしながら、どこに行っても人集りを作ってしまう。カカシ一人ならばいざ知らず、珍しい連れを目的に近づいてくる者が多すぎる。主だった仲間であれば一応紹介してみるが、見世物にするのは憚られた。存外牡丹が、楽しんでいる様子である事が救いか。

人気者で困っちゃうねと、思ってもいない台詞を吐きながら塩昆布に手を伸ばす。これじゃデートになりゃしない。

こぼれ落ちたその言葉に、牡丹は小さな声で笑った。口元を手で覆ってクスクスと声を上げる彼女のその笑顔は、初めて目にする表情で、カカシは息を飲む。笑っているのに消え入りそうな儚さに、思わず目を逸らした。

目を閉じて一時すると、彼女は風と共に掻き消えてしまうような気がして、カカシは遠くの空を見ていた。鷹が弧を描いて飛んでいる。

「良い里ですね」

鈴の鳴るような声が、耳に響く。ねぇ、牡丹、君は本当にここにいるのだろうか。うららかな日差しが降り注ぐこの里に。多くの命を屠ってきた自分の隣に。

冷え切った指先が、俄かに温まる。椅子の縁を掴んだカカシの手に、彼女の手が重ねられていた。我にもなく牡丹を見ると、彼女はふわりと微笑んだ。

「辛そう、だったから」

思い掛けず触れた彼女の優しさに、微笑みだけを返して立ち上がる。

手を繋いだまま、カカシは歩き出した。
/ 40ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp