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【NARUTO】火影の嫁

第2章 ぬくもりの分け方


カカシが牡丹を連れて木ノ葉を巡ったのは、それから一週間後のことだった。

木ノ葉隠れの里は、安定した気候で過ごしやすい。忍の諸任務を源泉とした経済活動も順調で、今後も発展が大いに見込まれる。時折広がる焼け野原や倒壊家屋など、戦争の傷跡も生々しいが、破竹の勢いである経済成長を前に、虫の息と言っていいところだ。

そして何より住む人々が、生気に溢れている。隠れ里の陰鬱な心象を払拭して余りある活気だ。

喜ばしいことに、牡丹はどこに赴いても歓迎された。というより、六代目火影であるカカシの訪問に、浮き足立っているのだろう。どの顔もカカシを見るなり六代目六代目と声をかける。顔岩を眺めれば忍たちに呼ばれ、ラーメンを食べれば子どもたちが集まり、甘味屋に行けば女性たちに囲まれる。カカシが適当にあしらう様子を眺めるのは、そう悪い気分ではなかった。

「まったく、これじゃデートになりゃしない」

甘味屋の塩昆布を咀嚼しながら呟いた言葉は、牡丹の一笑を買う。だって彼は、火影の笠を被り、火影の羽織を身に付けているのだから。これでは目立って仕方ないというのに。

「良い里ですね」

長閑で、人々は優しい。他所から来たばかりの牡丹の為に手を焼いてくれる人もいる。一人ではない食事のなんと味気のあるものか。父親の政治と権力の中で生きてきた牡丹にとって、人の善意が心地良いのだ。

しかし返事はない。カカシは目を細めて遠くを見ていた。その横顔があまりに沈痛で、牡丹は椅子の縁に置かれた彼の手を、そっと握った。
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