第5章 その声はまるで
「今日はもうそのへんにしておけ」
綱手の一声で、渦巻いていた生気が四散する。牡丹はふわりと揺蕩う薬草の中で、芽吹きの香りに溶けてしまいそうな、心地の良さを感じていた。暖かい、春の陽射しの中にいるようだった。
向かいに座っていた二人が立ち上がるのが見えて、それに倣おうと腰を上げるが、膝が笑ってしまう。牡丹は立ち上がるのを諦めて膝を付くが、カカシが抱きとめなければ、そのまま頽れてしまっていたことだろう。
「ちょっと、やりすぎ」
諌めるカカシの声も、なぜだか心穏やかに聞いていられる。自分の境目が分からなくなりそうな感覚に、暫し浸っていられそうだ。
「すみません、なんだかとても気持ち良い」
目を閉じて深く息を吸うと、草の風の中に、カカシの匂いが混ざっていた。このまま眠ってしまいたい。
遠くで綱手の笑い声と、ユリの声が聞こえる。それに返事をするカカシの声は、彼の腕の中ではとても大きくて、まるで心音のように暖かい。脈打つ命の音と温もりに包まれて、牡丹は意識を手放した。