第5章 その声はまるで
背の高い草が所狭しと生えるその場所は、建物の中とは思えない様相だった。開けた扉は勝手口だったかと錯覚する風景に、カカシは戸惑う。むせ返るような花の香りに目眩がして、幻術かと身構えた。
「カカシ、お前の鼻ではここは辛いかもしれんな」
背の丈ほどの草を掻き分けて現れた綱手に、眉をひそめる。
「一体何を…」
目線で部屋を指しながら、カカシは尋ねた。数日前までは、普通の研究室だったはずた。部屋中を薬草が生い茂るような研究でもしていたということか。綱手は言葉にならない適当な声を発しながら考えあぐねて、直接見た方が早いという結論を口にした。
「その前にユリ、伐採しろ。これじゃあ何も見えん」
綱手の指示で、風遁が飛び交い薬草が刈り取られ、結界術の糸で纏められてゆく。暗部の術も、稲刈りよろしく便利に使われては、遣る瀬も無い。
刈り取られた薬草が散るその部屋の中心で、封印術のような陣に座る牡丹と、彼女に向かい合うように座る部下たちが見えた。切り開かれてみると、やはりそこはカカシの知る綱手の研究室で間違いはない。
一日で、薬草の草原を作るような何かを、彼らが行なっていたと考えて間違いはないが、そこに牡丹が関わる理由が全く思い当たらなかった。