第5章 その声はまるで
「呼びつけてすまないな」
特にすまなそうな様子もない綱手に、首を振っていいえと答える。限られた者しか集められなかったカカシと牡丹の祝言に、里の人間として参列した綱手は、牡丹の目でも分かる程の気迫を放っていた。おおよそ生気のない大名側の列とは、ひどい落差だったものだ。
その差はおそらく牡丹とカカシの間も同様だったに違いない。意思を持たぬ存在としての自分と、火影として木ノ葉の里を支えるカカシとは、隔たりを感じてしまっている。
机に腰掛けて腕を組み、鷹揚に足を組み替える綱手の様は、牡丹にはとても目映く見えた。
「アカデミーで術を習っていると聞いてな。少し確認したいことがある」
そう言って近付いてきた綱手は、徐に牡丹の頭をぐりぐりと撫でで、顔色も良さそうだなと笑う。そしてぽかんと口を開けて惚けてしまった牡丹に、取って食ったりしないから安心しろと声をかけた。
「お前にはちょっと変わった特性があるかもしれん」
そもそも、術というものの存在をよく掴めていない牡丹に、特性の話をしたところで、伝わるはずもない。それを分かってか、綱手は勝手に話を進めるように、暗部の肩を叩いた。
「とりあえず、こいつの言う通りにしてくれ」