第1章 嫁入
畳の上に正座し、ゆっくりを頭を下げた。祝言を終えて無事夫婦となったからには、恙無く初夜を済ませなければならない。
一にも二にもなく、大名の娘として生きてきた牡丹にとっては、無駄なことを考える猶予などない。しかし、そんな彼女の耳に入ってきたのは、予想もしない声だった。
「あ〜…いや〜、将軍とかじゃないんだからさ」
牡丹は言葉の意味が分からずに小首を傾げた。
「あのね、祝言を挙げて、ハイ今日から夫婦デスって言ってもね。初対面デショ、俺たち。 別に取って食ったりしないから、怖い顔しないでよ」
怖い顔を、していただろうか。あまり考えたことはなかった。何と言葉を紡げば良いのか分からずに、あの…という声は掠れて喉の奥に飲み込んだ。
「私は、大名の娘として、嫁いで参りました。お役目に必要であれば、何なりと申し付けください」
はたけカカシ、この人に支えるのが、牡丹の役目なのだと、考えていた。彼は違うのだろうか。深いため息と共に、カカシは天井を仰ぎ見た。ついでのように胡座をかいていた足も投げ出した。
「確かに俺たちは祝言を挙げて夫婦になった。でも家族ってよく分からないのヨ、俺。たぶんアナタもね。だから、そんなに事を急がなくていい。ま、話でもしよう」