第4章 副章
目の前の男は、うちのが世話になったねと、言った。間違いなくそう言ったのだ。
最初に感じたのは、ちょっとした苛立ちだった。その言葉を反芻してみて思い当たったのは、その妻に対する呼び方だ。
この男は、うちのと言ったのだ。テマリがそう呼ばれたとしたら、恐らくカチンという音が周囲に響くだろう。まして、火影が他里の使者に向かって選ぶ言葉ではない。風影であるテマリの弟が将来そのように言ったのならば、その瞬間に怒鳴りつけて、遵守についての説教になるが、幸いにも我愛羅がそのように言う様子は思い浮かばない。そこまで考えて、目の前の男に、はぁと適当な言葉を返して素知らぬ振りをする。
「うちのが世話になったみたいで。友達ができたって喜んでたよ」
するとカカシは、全く同じ台詞を繰り返してきた。これは女心を理解していないどころか、その存在を心得ていない可能性まで見えてきた。
苦労しそうだなと、友人の可愛らしい顔を思い浮かべながら、目の前の男と見比べて腕を組む。まずは誰から諫言させようかと、木ノ葉の女性の名前を数えながら、ため息を吐いた。いくらテマリが半分身内だからと言っても、まだ砂隠れの忍である。
「暇そうだったから、空いていた時に付き合ってもらっただけだ」