第4章 副章
「持ち方と力加減と、あとは手の大きさだな」
右手で酒を煽り、持て余した左手でクナイを弄る。昼間見かけた牡丹のその扱いの酷さに、どう素人に説明すればいいものかと、食事と会話の片手間で考えた。
隣で大きさを眺めるように手のひらを見つめる牡丹と同じように、テマリは自身の手を眺める。凡そ女の手には見えないが、忍ならばこのようなものだろう。
不意に、広げた手のひらを、牡丹の指が撫でたので、テマリは顔を引きつらせた。あまつさえ、綺麗な手と、小さな声で呟いているせいで、顔から火が出る。
「ばか、口説いてどうする。だいたいそういう事は自分の亭主にしてろ。クナイくらい手取り足取り教えてもらえばいいだろ」
捨て台詞を吐きながら、酒を飲み干した。体温が上がったせいか、喉越しがやけに冷たい。
「だって、いつも忙しそうで」
捨て台詞に深手を負ったのか、両手で口元を隠して真っ赤に染まる牡丹に、そういう顔を見せたら喜ぶぞと致命傷を与えておく。だいたい、食事に誘った次の日には、シカマルを使って探りを入れてきたのだから、こちらも腹一杯だ。開き直ると、暇があれば声をかけるようになってしまった。
カウンターの向かいから、若いねと笑いながら女将が酒を追加するので、テマリは苦笑した。この任務が終わるまで、あと何度こんな食事ができるだろう。