第3章 心の風景
砂隠れの里に帰る前にと、テマリはカカシを訪れた。形式通りの挨拶に同様の返事をしてから、世話になったねと付け加える。
テマリは小首を傾げてから、はぁと曖昧に答えた。覚えもない様子に、カカシは言い継ぐ。
「うちのが世話になったみたいで。友達ができたって喜んでたよ」
やっと思い当たる節があったとばかりに、あぁと呟いた。腕を組み、苦虫を噛んだ様な顔でたっぷり一呼吸置いてから、口を開く。
「暇そうだったから、空いていた時に付き合ってもらっただけだ。大層な箱入りだったな」
箱から出しているつもりではあるのだが、箱を開けても箱に入っているような娘で、一体どこに中身があるのか、分からなくなりそうな時がある。
「大層な箱なんで、中々出せなくてね」
仕事は楽しそうで良かったよと、テマリの話をする嬉しそうな顔を思い浮かべた。
「身体能力は低いし、頭の回転は遅いが、状況を見た判断は悪くない。奇策を捻り出すより、目の前にある選択肢の中で最善を選ぶことができるタイプだな。優秀な文官になるだろう。持て余しているなら、連れて帰るぞ。代わりにカンクロウを置いてってやる」
容赦のない台詞に、カカシは眉尻を下げた。